日々の徒然

ごはんと旅と、本と犬と。現在バンコク在住。

安藤祐介『宝くじが当たったら』講談社文庫

自分自身宝くじを買ったことは一度もない。

けれど、代わりに換金に行ったことは何度かある。連番で10枚買っていれば1枚、下一桁が必ず当たっているからだ。

当選番号を確認したうえで宝くじ販売窓口に行っているのに、番号を調べてもらっている間はやはりちょっとドキドキする。300円でもドキドキするのに、この主人公のように高額当選だと分かっているなら尚更だろう。

"当選したことは周囲の人に言ってはいけない"、"まず貯金して使い道を考える”。

宝くじを買ったことのない人間にもわかるその基礎知識を、頭では分かっているのに冷静になり切れず何故か破っていってしまうその姿には、文章がとても読みやすい分「自分でもこうなってしまうかも・・・」と逆に生々しく感じられた。

友人の、親戚の、身近な人々の裏表に触れ、坂道を転がり落ちるように進んでいく一瞬の中で、けれど最後には希望と未来が手のひらに残るところに「所詮小説だから」では片づけられない爽やかさが垣間見える気がした。

 

安藤祐介『宝くじが当たったら』講談社文庫

978-4-06-293280-6

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